僕には2歳になる女の子がいる。ありがたいことに、とても元気な子で、家の中だろうがお構いなしに、物凄い速さで駆けずりまわっている。
勢いあまって、派手にずっこけて頭などを打つこともしばしばなので、親としては知能面の発達に悪影響を及ぼさないか、いささか心配しているところである。
転んだ時のダメージを軽減するため、幼児用のヘルメットをAmazonで買ってかぶせてみたこともあるが、
子供にとってはヘルメットなど邪魔以外の何物でもないらしい。
何度かぶせてみても、いつの間にか自力で外してしまうので、今ではヘルメットも埃をかぶったまま放置されているような状態である。
最近は、女の子だけあって母親の化粧に興味を持ったらしい。
隙を見ては化粧台によじ登って母親の化粧品を物色しているのだが、元々変な体勢でいるところに、化粧品の方に過度に意識を向けると、
ふとした時にバランスを崩してしまうのか、そのまま真っ逆さまに床に落っこちてしまうということがよく起きているらしい。
「起きているらしい」と書いたのは、こういう事件は大抵親が目を離しているスキに勃発するからである。
こちらとしては床に倒れてこんで泣いている娘と、その周辺に散らばった化粧品を見て、何が起きたのかを類推するしかない。
散らばった化粧品は後回しにして、まずは娘を泣き止ますのが先決である。
助け起こすように抱き上げて、「おー痛かったねー」とあやしてやるのだが、どうも彼女が泣いているのは、痛いからでもびっくりしたからでもないらしい。
聞こえてくるのは「たんこぶができなーい!」という彼女の悲痛な叫びである。
どうやら娘はアニメなどに登場するキャラクターが頭をぶつけた時にできる大きなたんこぶが羨ましくて仕方ないらしい。
たんこぶなんてものはアニメの世界では国債ばりに乱発されているが、リアルの世界ではそうそうお目にかかれるものではない。
そのように言い含めても聞く耳を持ってはくれず、「ここにないなら買ってきて!」などと居酒屋で店員にタバコを買いに行かせるオヤジのようなことを言い出す始末である。
俺は今まさにテレビと現実の区別がつかない子供ができる過程を目の当たりにしているのだなと実感させられる出来事であった。