男のくせにハンドクリームを塗る時代がきたようだ

 最近、空気がカラッカラに乾燥しているのを肌で感じる。関東一円で山火事が多発しているのも、おそらくは空気の乾燥も一因なのではないだろうか。キャンプファイヤーや焚火をしている時に、燃え盛る炎の前にしばらく立っているとと、顔の水分が持っていかれるのを感じることがあるが、乾燥が山火事を呼び、山火事がさらなる乾燥を呼ぶという悪循環である。

 大体空気が乾燥をして良いことなんて一つもない。夜中に喉がカラカラになって目が覚めてしまうことがあるし、風邪もひきやすくなるし、静電気にメンタルとフィジカル両方をやられることもある。乾燥の良い面を挙げるとすれば、食べ物や風呂場にカビが生えにくくなるくらいのものだろうか。

 おまけに、この頃は感染症予防のため、どこへ行っても手をアルコール消毒させられる。建物に入る時に手の消毒をしたのに、部屋に入る時にまた消毒をさせられるなんてことも珍しくない。僕の身体でアルコールを最も欲しているのは、舌と喉と胃であるはずなのに、居酒屋が営業していないせいで、それらの場所には一切アルコールは入ってこずに、なぜか手のひらにばかり集中しているような状況である。

 消毒用のアルコールは揮発性がものすごく高いので、ウイルスだけでなく、手のひらの水分まで一緒に飛ばしてしまうとみえる。何度も何度も消毒をさせられていると、そのうち手の皺の一本一本がくっきり見えるほどカサカサになる。こんな手をして手相屋に行ったら、随分手相を見るのに時間がかかるだろう。その結果、こう言われるに違いない。

「ハンドクリーム塗った方がいいよ、おたく。」

 そうなのだ。そういえばうちのおっ母さんも、冬になると毎晩ハンドクリームを塗りながら、台所仕事が辛いとぼやいていたっけ。いつの間にか俺の手も、いつぞやのおっ母さんの手のようにカサカサになっている。台所仕事は一切やっていないけど。

 この間までハンドクリームなんて女性が塗るもんだと思っていたが、消毒アルコールに水分を飛ばされたカサカサの手を寒空に晒していると、あかぎれやしもやけのようなものまで出来てしまって鬱陶しい。昔読んだ何かの本に、手が綺麗な奴は苦労を知らないだろうから信用できない、みたいな一節があって、それがやけに心に残っている。それがために、木の皮のような手になりたいものだと思ったこともあったが、そこは甘っちょろいホワイトカラー労働者の悲哀で、中途半端にカサカサの手しか手に入れることができないようである。苦労ではなくアルコールによって。

 男女平等の世の中が少しずつ近づいているようだし、カサカサになった手は放置せずに、ハンドクリームでも塗ってみようかしら。

 でもキーボード打つ時に手がベタベタしていたら嫌だな。どなたか保湿力はあるけどベタベタしない、そんな都合の良いハンドクリームがあったら教えてください。あと、お母さんが塗っていたやつは変な匂いがするから嫌です。

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