厚生労働省の送別会に見る職場の飲み会の難しさ

 先日、厚生労働省の老健局の職員二十数名が、深夜まで飲み会をやっていたことが判明し、課長が更迭されてしまうほどの大問題になった。マスコミなんかは霞が関官僚の特権意識がどうの選民思想がどうの書いているが、今どきそんな前時代的な考え方の役人がどれほどいるものだろうかと首をかしげたくなる。

 新橋や銀座界隈では、どの酒場も多くの酔客でごった返していることは、夜中に少しその辺りを歩いてみればすぐに分かる話である。調べたわけではないが、これらの酔っぱらいが全員公務員であるわけではないだろう。仕事終わりに一杯やりたくなるのは公務員も会社員も変わらない。年度が改まれば他部署に異動になったり、出向元に帰っていしまう者がいるのであれば、最後くらい楽しく送り出したいというのが人情というものである。唯一まずかったのは、本来新型コロナウイルスの感染拡大を戒めるべき立場にある厚生労働省が夜遅くまで飲んでしまったということなのだろう。公務員というのは給料も安いうえ、業務時間外も模範的な行動を取ることを求められる、極めて窮屈な仕事だなと思う。甚だ気の毒な話である。

 ところで、この話が表沙汰になったのは、東洋経済が飲み会の一部始終を報道したことがきっかけであったと思う。天下の東洋経済まで週刊文春みたいなことをするようになってしまったのかと目を疑ったものだが、そもそも東洋経済の記者が、たまたま厚生労働省老健局の送別会の席に居合わせるなどということがあるのだろうか。1%の確率でそのようなことが起きたとしても、隣の席で飲んでいるのが厚生労働省の老健局の職員であると特定するのは至難の業だろう。何が言いたいのかというと、この件は内部リークである可能性が高い。「厚生労働省ともあろう者が、コロナ禍の最中に大人数で飲み会などして良いのだろうか」という義憤に駆られてのものだったか、単に「職場の飲み会って空いたグラス見たらすぐビール注げとか焼き鳥は串から外せとか言われて面倒くせえ」という、うっせぇわ的なノリだったのかは分からないが、老健局の中に送別会の実施を善しとしない者がいて、過去に取材を受けたか何かのきっかけで知己を得た東洋経済の記者に情報を提供したという流れではないかと推察する。

 この件を通して分かるのは、職場の飲み会というものは、必ずしも参加者全員が快く参加しているというわけではないという当たり前のことである。特に送別会というのは厄介で、「○○さん最後なのに顔を出さないというのも憚られるなあ」という同調圧力が働きがちである。表面的には全員自主的に参加している体裁にはなっているが、内心は「職場の飲み会ダリィなあ」と思っている人が結構な割合で存在しているのだろう。

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