2歳の娘に手の洗い方を教えてもらった話

 朝起きてトイレで用を足していると、いつの間にか2歳半の娘も起きていて、トイレの扉の前で僕が出てくるのを待っていた。

  娘はまだ2歳なので、当然自分ひとりでトイレに行くことはできない。用を足すのは専らオムツの中、というような状態なので、彼女はトイレが空くのを待っているのではなく、僕がトイレから出てくるのを待っていたということなのだろう。

  起きてすぐにお父さんに会いたがるなんて可愛い娘じゃのう、と相変わらずの娘馬鹿を発動させ、娘を抱きかかえようとすると、彼女は僕の腕から逃れるように、ひょいと身をかわして「手を洗って!」と、一緒に洗面所に行くよう促した。トイレから出てきたばかりの汚い手で私に触るなとでも言いたいのだろうか。

 はいはい洗えばいいんでしょと、多少いじけた感じで雑に蛇口をひねり、勢いよく流れ出る水に3秒ばかり手を晒してから、ちゃっちゃと手を振ってタオルで拭こうとすると、一連の様子を見張っていた娘が「違うでしょー」と言い出す。

 「ちゃんと石鹸もつけるんだよ」と蛇口のそばにあるポンプ式のハンドソープを使うよう促してくる。ははあ、とハンドソープを2度ほどプッシュして手に石鹸が付いたところで、「爪も洗うんだよ」、「指も洗うんだよ」、「手首も洗うんだよ」などと、いちいち隣で実演しながら次から次へと指示を飛ばしてくる。しかも、こちらの洗う様子を見ながら適切なタイミングで指示が下るので、こちらもついつい従ってしまう。

 それにしても、いつの間にこんな手洗い知識を仕入れて来たのだろうか。不思議に思い、今起きたことを嫁さんに話してみると、最近はテレビの幼児向けの教育番組なんかでも、正しい手洗いのやり方が繰り返し放映されているのだそうだ。

 視聴者が大人であれば、そんな説教臭い映像を見せられたところで鼻で笑って流してしまうのが関の山であろうが、子供は素直であるうえ吸収も早いので、いつの間にか正しい手洗いが身についていたのだという(それでも蛇口の水量を見誤って洗面台を水浸しにするなどの基礎的なミスは頻繁に起こるらしいが)。こうした手洗いだの挨拶だのといった社会生活を営むうえで基礎となる部分は、まだ素直な子供のうちに学ばせておく方が良いのかもしれない。

 パンデミックによって多数の命が失われたり、不便な生活を強いられたり等のデメリットも多いが、次の世代にはそれを受けて新たな進歩を遂げようとしているのだなと感じらせられる出来事であった。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする