「筋トレは無駄!」と断ずる時間編集術の著者に反論する

 世間では、人生を筋トレに捧げているような人たちのことを指して「筋トレガチ勢」と呼んでいるそうである。僕は人生を捧げるほど筋トレに没頭しているわけではないが、気が向いた時にふらっとジムに繰り出して、ウェイトを上げたり下げたりしている人間である。そんな類の人間にも「筋トレガチ勢」みたいなグループ名が欲しいと思い、勝手に「筋トレゆる勢」を自称している。目下の悩みは、「勢」というからには一人では成り立たないな、ということである。

 先日、通勤電車でネットニュースの海を漂流していると、「筋トレは無駄!?」となどという、筋トレゆる勢の僕に対して、いささか挑戦的なタイトルの記事が目に飛び込んできた。

筋トレは無駄!? 未来に繋がらない時間を減らすべき理由

 どうやらこの記事は、長倉顕太さんという方がこの度上梓された『「やりたいことが見つかる」時間編集術~「4つの資産」と「2つの時間」を使って人生を変える~』という長い題名の書籍の宣伝記事であるらしい。記事を読み進めていくと、どうやら著者がこの書籍を通じて説かんとしていることは「時間は無駄に消費することなく有効に使え」ということであるらしい。

 そして著者によれば、筋トレこそが時間を無駄に浪費する最たるものだということである。著者の体験によれば、「金を稼ぎたい」とか「独立してビッグになりたい」などという夢を語る若者は多くの割合で筋トレをしているらしい。そんな甘っちょろい考え方の若者に対して、著者は「筋トレなんぞする暇があったらビジネスの勉強でもしろ!!」という張本勲ばりの喝を入れているわけである。

 さて、僕がこのネット記事をここまで読んで、まず気になったのは、「なぜ著者はこれほどまでに筋トレを目の敵にしているのか」ということである。家族をダンベルに殺されでもしたのだろうか?

 日夜筋トレに励んでいる経営者志望の若者の肩を持つわけでもないが、ビジネスに限らずどんな世界も体力勝負という要素は少なからずある。筋トレをして基礎体力の向上に努めるという手法も強ち間違いとも言い切れないような気もする。

 また、筋トレをすることによって姿勢や体格が良くなるというのも、ビジネスをする上でプラスの効果があるとは言えないだろうか。読んだことはないが『人は見た目が9割』などという話もあるくらいだ。顔の造形は整形によってしか変えられないが、姿勢や体格は筋トレによって変えることができる。アメフト選手のような屈強な体格をした営業マンが売るプロテインと、猫じゃらしみたいな体格の営業マンが売るプロテインのどちらを買うかと問われれば、その答えは自明である。

 さらに、大富豪になるためには、単にお金を稼ぐだけでなく、稼いだお金を防衛することも重要であると聞く。せっかくビジネスが上手く行って大金を手にしたとしても、オヤジ狩りにでも遭って身ぐるみ剥がされたのではシャレにならない。そういう場面でも筋トレが物を言う。仮に自分がオヤジ狩りをする側になった時のことを想像してみて欲しい。いかにもお金を持っていそうだがヒョロヒョロで貧相な体格をしているオヤジと、貧乏そうだが無駄に筋肉質なオヤジ。君ならどちらをターゲットにするだろうか?これも答えは自明であると言える。

 まあ、僕は筋トレゆる勢とはいえ、筋トレをする側の人間であるので、ビジネスの成功と筋トレの相関について、やや強引に議論を展開させすぎた面も多少はあったかもしれない。だが筋トレは決して独立してビッグになるうえで、無駄な時間の使い方ではないということを改めて強調したい。

 ちなみに僕は単なる一介のサラリーマンであって、別に何かのビジネスで成功を収めた人物ではない。もし、あなたがビジネスで成功したいと強く願っているのであれば、断然文筆業やマーケティング、コンサルティングの世界で成功を収めている長倉顕太氏の著書を読むべきである。

 余談ではあるが、冒頭に紹介したネット記事を読んでいくと、長倉顕太氏は、その著作において、「非生産的な時間を費やすこともまた必要である」という趣旨のことも言っているらしい。それならその非生産的な時間を筋トレに費やしたって個人の勝手ではないか、とも思ったのだが、詳細はやはり原典に当たってみないことには分からないので、関心のある方には一読をオススメしたい。

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