オールバーズ(Allbirds)という名前を初めて聞いたのは、アメリカの某ポッドキャスト番組を聴いていた時に流れてきたCMであったと記憶している。
番組の司会を務める男性が、それまでの話題とは何の関係もない商品紹介を突如開始するという、よくある感じで始まったCMではあるが、なんでも彼が今日履いているのは、裸足で履けるほど履き心地の良いスニーカーであるとのことだった。
素材として環境に優しいユーカリとメリノウールが使われており、製造工程で排出される温室効果ガスも普通のスニーカーの何分の一なんだなどといった講釈が一通りなされた後で、「いったんオールバーズのスニーカーを履いてしまったら、もう他社のスニーカーを履くことはできない。俺は今持っているスニーカーは全部捨てようと思ってる」などとオールバーズの掲げる命題とは真逆のことを言い出す始末であった。
それでもオールバーズのスニーカーの履きやすさについての彼の力説ぶりには大いに心が動かされるところがあったので、機会があれば是非試し履きしてみたいものだと思っていた。
それから2、3年の時が流れ、職場にも履いていけるようなスニーカーが欲しいなと思っていたところに、頭の片隅に残っていたオールバーズが蘇ったのである。
早速ネットで「Allbirds」を検索して公式ページを閲覧したところ、2つの発見があった。
一つ目の発見は、どのスニーカも余計な装飾を排した実にシンプルなデザインで、ビジネスウェアに合わせて履くことも出来そうだということである。気になるお値段も、標準的なスニーカーであれば1万円台前半で購入することができ、買い求めやすい。
二つ目の発見は、いつの間にか日本にも支店が出来ていたということである。2020年1月には原宿に1号店、2021年6月には丸の内に2号店が出来ていた。
いずれの店舗にも足を運んでみたが、スニーカーのコンセプトと同様、無駄のないシンプルな作りになっており、どことなくアップルストアを思い起こさせるような雰囲気がある。また、店員さん達も気さくな人が多く、サイズ感や色使いについて色々とアドバイスをくれたりする。何よりすごいのは、スニーカーを購入した後でも「サイズが合わなかったり、イメージと違ったりしたら返品してください」という気前の良さである。スニーカーというのは、一回履いただけで汚れや傷がつきやすいものだが、それにも関わらず返品に応じてくれるというのはさすが儲かっているんだなと思わされる。
しかし、一回試着をしてサイズさえ合わせることができれば、返品をしようという気も起こらない。メリノウールで作られた中敷きは肌触りが良くて柔らかい。まるで絨毯の上を歩いているような感覚がある。また、靴全体も足に吸い付くようにフィットするので歩きやすいことこの上ない。長時間歩いていても足が疲れることはなさそうである。先ほどの店員の発言は、返品などあり得ないという商品に対する自信の現れとも言えるのかもしれない。
オールバーズのスニーカーを履いてしまうと、他のスニーカーを履く気にならなくなるというのは確かに本当である。今まで持っていたスニーカーは全部捨てちゃおうという冒頭のポットキャスト番組のMCの発言も決して理解できないものではない。そのくらい他の追随を許さない品質のスニーカーであると言える。