コメダ珈琲店といえば、肝心のコーヒーは美味くないが、看板メニューのシロノワールをはじめ、一人では食べ切れないような大きさのサンドイッチなど、フードメニューが充実したコーヒーチェーンとして知られている。
先日、暇に任せて職場の周りをうろうろと出歩いていると、銀座のはずれに新しめのカフェが出来ていた。店頭に「Komeda」という文字が見えたので「とうとう銀座にもコメダが進出してきたか・・・」などと、しばし感慨に浸る。
店内の様子を覗いてみると、さすが銀座店だけあって、そんじょそこらのコメダ珈琲店とは一風異なり、木材と緑色を基調としたデザインとなっており、座席のスペースもいわゆる「コメダ珈琲」に比べてゆったりめに取ってある。
寝癖頭にジャージ姿でも気軽に入っていけるのがコメダの良さといえるのに、あまりにオシャレすぎても気が引けるなとも思ったが、銀座にその手の人材はほとんどいないので、客層を考えると仕方のないことかもしれない。そんじゃあ今度腹が減った時に、巨大なミソカツサンドと長靴みたいなグラスに入ったレモンスカッシュでも注文しに来るか、と店を後にした。
そして後日、満を持して昼休みにコメダを再訪すると、銀座のコメダとその他凡百のコメダの間には、単なる外見以上の違いがあることに気付かされた。まず注文の仕方だが、メニューを見て店員にオーダーするという昔ながらの方法ではなく、客席に備え付けのタブレット端末を通して行う方式である。まあそんな方式くらいは今どきそこら居酒屋だって導入しているので、さして驚くことでもないが、このタブレット端末を使い、一通りメニューを見てみて驚いた。
「カツサンドが・・・ない・・だと!?」
そうなのだ。僕の中ではコメダ珈琲といえば、巨大かつサンドであり、あみやきチキンホットサンドであり、長靴のグラスに入ったレモンスカッシュやクリームソーダであるのだが、銀座のコメダにはそれらのメニューが一つもない。驚きのあまりメニューを五回精読してみたが、やはり見つけることができなかった。
その代わりにあるものといえば、大豆ミートのハンバーガーやハムカツサンド、豆乳やオーツミルクのカフェオレなど、健康志向のメニューが多い。
※参考: Komeda is □ 全メニュー(Komeda is □ 公式サイトより)
それもそのはずで、こちらの店舗は、「Komeda is □」というコメダ珈琲の立ち上げた新業態の店舗であり、提供されるメニューは100%植物性由来の食材を使用しているということである。肉や卵や牛乳を生み出す牛や豚や鶏を育てるのには膨大な量の飼料が必要であり、それが地球環境に悪影響を及ぼしていることが指摘されている昨今、盛んに取り上げられている流行りのSDGs的なコンセプトを感じさせる。
個人的には「Komeda is □」の最後の四角は何なのだろうということが気にかかる。僕なりに色々考えた結果、大豆だけにこれは豆腐だろうという結論に達したが、おそらく間違いだろう。
さて、大豆ミートというものが肉の代わりになる食品として注目されていることは知っていたが、実際に食べたことなかったので、良い機会だと思い、大豆ミートのハムカツホットサンドを注文してみた。
出てきた大豆ミートのハムカツサンドを見てみたが、普通のハムカツと全く変わりはない。味もハムカツそのものである。というかソースとマヨネーズの味である。ああ、今まで俺の舌に残っていたハムカツサンドの記憶はソースとマヨネーズの味なんだな、というのが正直な感想である。ハムカツでなくても、揚げたてサクサクの何かにソースとマヨネーズを塗ってパンに挟めばハムカツサンドの味がするのかもしれない。
これは大豆ミートのことを悪く言っているのではなく、ハムカツサンドを頼んだらハムカツサンドの味がした、と言っているわけなので、むしろ褒め言葉と受け取ってもらいたい。
それが証拠に、僕はその後もKomeda is □を3,4度訪れて、色々な大豆ミートの商品を片っ端から注文してみた。その結果、大豆ミートのテリヤキバーガーはテリヤキソースの味がするし、タルタルワサビバーガーはタルタルワサビのソースと海苔の相性が抜群である。つまるところ、大豆ミートそのものに味はなく、それが故に完全にソースの味と同化することができるのではないだろうか。
悪く言えば「味がしない」とも言えるし、良く言えば「どんな味付けとも融合できる」とも言える。言わば「肉界の白米」のポジションを勝ち取る可能性のある食材と言える。
ひとつ課題を挙げるとすれば、大豆ミートの製造コストのためか、はたまたよりによって銀座なんかに出店してしまったためか、ハムカツホットサンドが1,180円、ハンバーガー類が1,280円と、値段が決して安くないということである。本物の肉が安く食えるのに、なんでわざわざ高い金を払って大豆ミートなんてものを食べなきゃいかんの?という人も多いだろう。大豆ミートを食べる人が増えれば、その分製造コストも安く抑えることができそうなのので、本当に地球環境の改善に一役買えるのであれば、これからもちょくちょく「Komeda is □」で大豆ミートを食べて、ソースの味を堪能しようと思っている。