なぜGoogleは執拗なまでに社員に出社を求めるのか?

 新型コロナウイルスが世界にもたらしたものは数多いが、その中でも、世界的に在宅勤務に対する許容度が増したことは、数少ない恩恵と言えるのではないだろうか。

 家は遊んだり休んだりする場所であって、仕事をする場所ではないだろ、というのが僕の個人的な持論ではあるが、世の中には、家でできる仕事は家でやればいいんじゃないの、という人もかなりいる。僕が家では仕事ができないというだけで、他の人にまで仕事は会社でしろと押し付けるつもりもない。それぞれが自分の好きなところで仕事をすればいいのである。

 ところが世の中にはそういう考えの多様性を尊重せず、「今どき会社に行って仕事をするなんて時代遅れだ」などという極論を吐く人までいる。そういう意見を聞くと、「そうか、俺はもう前時代的な人間なんだなあ。昭和生まれだし、もう40だし」と多少の後ろめたさを感じ、通勤電車のつり革にしがみついてしまう。

 そうした潮流の中で、よりにもよって、あのGoogleが社員の在宅勤務に否定的であるのには驚かされる。

 Googleの在宅勤務嫌いは度々報道されていて、新型コロナウイルスの感染者数が落ち着きをみせ始めると、全社員に出社を呼びかけたり、在宅勤務を続ける奴は給料減らすかんなと脅しをかけたりしている。

Google Wants Workers To Return To The Office Ahead Of Schedule: This Looks Like A Blow To The Remote-Work Trend

Pay cut: Google employees who work from home could lose money

 Googleが世界でもトップクラスのIT企業であることに異論を挟む人はいないだろう。素人の勝手なイメージでしかないが、Googleの業務内容ほどリモートワークと親和性の高いものはないように思える。医療現場や建設現場やスーパーマーケットのように、現場に人間がいなければ仕事が成り立たないような業種でもなく、パソコン一台さえあれば、世界中どこにいたって出来そうな仕事ではないか。

 日本にも社員に不要不急の出社を強制するような企業がまだあると聞いているが、そんな前時代的なブラック企業とは対極に位置しているはずのGoogleがなぜ執拗に社員に出社を求めているのだろうか。

 Googleにはインターネット上で起こっているありとあらゆるデータが集まっているという話を聞く。どんな時間帯に、どんな検索用語がよく使われているか、どんなサイトが閲覧されているか、どんなアプリが起動されているかーそういった情報が今この瞬間もGoogleには蓄積されているのである。そうした行動はすべて個人のアカウントや端末に紐付けられているため、個人の生活習慣なんかもGoogleに把握されているのである。

 そうやって得た膨大な情報を解析しているうちに、Googleは気付いてしまったのではないだろうか。

 「みんな仕事中なのに全然関係ないサイトばっか見とるやん」ということに。

 こいつは仕事時間中、一応Excelは立ち上げているけど、Youtubeの視聴履歴ばっかり増えているなとか、こいつはFXの画面とにらめっこしかしていないなとか、アダルトサイトばっかり見てやがるなとか、ゲームに課金しすぎだろとか、監視の目から逃れたと思い込んでいる人間が、いかに怠惰な快楽に耽っているかという事実を、客観的なデータとして把握してしまったのだろう。

 おそらくそれは世界のトップエリートと言われるGoogleの社員も例外ではないのだろう。Googleの経営層は「人間は放っておくとロクなことをしない」ということを誰よりもよく知っているので、コロナ落ち着いたらおまえらすぐ出社してこいやと今日も発破をかけ続けているのではないだろうか。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする