2021年8月20日にNBAの2021-22シーズンのスケジュールが発表された。レギュラーシーズンは2021年10月19日から2022年4月10日までで、各チーム82試合を戦うというスケジュールである。新型コロナウイルスの影響により、過去2シーズンは日程短縮など変則的なスケジュールとなっていたが、ようやく正常化した格好となる。
2021-22シーズンの見どころの一つは、ドラフト上位で指名されたルーキーたちの活躍であろう。
今年のドラフトは久しぶりの大豊作であったらしく、1位から5位でドラフトされた選手たちは、他の年だったら1位指名されてもおかしくないと言われているほどの有望株揃いであるようだ。
そんな逸材揃いのドラフトにおいて、並み居るライバルたちを押しのけてトップ指名を獲得したデトロイト・ピストンズのケイド・カニングハムの実力たるやどのようなものだろうと期待が高まる一方である。
また、今年のドラフトでは、第4位の指名権を持っていたトロント・ラプターズが前評判の高かったジェイレン・サッグスを指名せずに、フロリダ大学のスコッティー・バーンズを指名したのがちょっとしたサプライズであったようだ。このあたりはラプターズの敏腕社長として知られ、2シーズン前にラプターズに栄冠をもたらしたマサイ・ウジリの手腕が問われるところである。
バーンズの大学時代やサマーリーグでのプレイ集を見ると、当たり負けしない強い身体を持っているうえ、見かけによらず(?)シュートレンジが広かったり、相手の意表を突くようなクレバーなプレイをしたりする。一部ではバスケIQが高いとされるゴールデンステート・ウォリアーズのドレイモンド・グリーン2世になりうるポテンシャルを秘めているとも言われているので、面白そうな選手である。
ただ、最近のNBAを見ていると、必ずしもドラフトで上位指名を受けた選手が、順当にスター街道を歩んでいくというわけでもない。むしろ最近は、それほど上位で指名をされなかった選手がスターとしてのし上がっていく傾向が強いように感じる。
例えば、昨シーズン、これまで何十年も片田舎の弱小チームとして燻っていたミルウォーキー・バックスを優勝チームに押し上げたヤニス・アンテトクンポは2013年の15位指名である。また、アンテトクンポに次ぐスコアラーとして優勝に貢献したクリス・ミドルトンに至っては一巡目指名すら得られなかった。
二巡目指名といえば、7フッターでありながら、センターらしからぬパスセンスとボールハンドリングで昨シーズンのMVPに輝いたニコラ・ヨキッチも二巡目41位指名という低順位の指名であった。
一方で、過去5年でドラフト10位以内で指名された選手を見ても、スター級の活躍をしているのは、ベン・シモンズ、ジェイソン・テイタム、ルカ・ドンチッチ、トレイ・ヤング、ザイオン・ウィリアムソン、ジャ・モラントくらいではなかろうか。錚々たるメンバーではあるが、トップ10指名計50名の中で、これだけというのはやや寂しい気がする。
思うに、ドラフト上位の指名権を得るということも、それはそれでかなりのプレッシャーなのだろう。「3位の指名権を得たからには、きっと名選手を指名してくれるに違いない」というファンやメディアの期待が否が応でも高まるからである。
入念なリサーチを重ねた結果、指名した選手が期待通りに活躍してくれれば良いが、とんでもないハズレ指名をやらかしてしまったら最悪の場合、自分やスタッフの首が飛びかねないので、なかなか思い切った冒険に出づらいところがあるのだろう。
そうなると、大学のスター選手や海外リーグで活躍中の選手など、既に一定以上の評価を得ている選手を手堅く指名するのだろうが、そうした選手は既に選手としては完成しきっていて、それ以上の伸びしろがない場合もある。
仮に有名選手の指名を見送ったところで、今度は「なぜあいつを指名しなかったんだ」などと批判されたりするので、上位指名を獲得をするというのも、嬉しいことばかりではなさそうである。また、選択肢が多すぎるというのも必ずしも良いことばかりではないのではないだろうか。
そこへ行くと、下位指名というのは気楽である。先ほどとは逆にファンやメディアの期待値が低いので、思い切ったギャンブルができる。外したところで期待値が低いので批判もされないうえ、当たれば一躍逸材を掘り出した名スカウトという評価をされる。
そう考えると、むしろ指名権が低順位の時こそ、スカウトは自分達の腕の見せ所だとばかりに、奮って逸材の発掘に努めるのではないだろうか。
冒頭にも述べたとおり、今シーズンのNBAドラフトは大豊作の年であったようだが、上位指名を受けた選手がここ数年の傾向を覆してくれるのか、それとも今年もまた下位から名選手が生まれるのか、注目していきたい。