スキル不要!新米パパに捧ぐ乳幼児の寝かしつけの引継書

 お父さんも育休を取得できる社会が実現したわけだが、積極的に育児に参加しろと言われたところで、何をすれば良いのか分からないという新米お父さんも多いのではないだろうか。

 そもそも育児というものは、ある程度の知識やスキルを要するものが多く、素人がなんの予備知識や事前準備もないまま現場に投入されても、信じられないようなミスを犯して逆に状況を悪化させてしまうことも多い。

 例えばミルクをひとつあげるのでも、作ったミルクを十分に冷まさないまま飲ませてしまったり、飲ませた後にゲップをさせるのを忘れたりする。

 育児の素人なのは母親だって同じだろという反論もあるかもしれないが、父親と母親のスタートラインは同じように見えて違うのである。

 母親は妊娠してから出産するまでの約10ヶ月間、自分のお腹の中で子供を育ててきた実績がある。自分の胎内で小さな命が大きく育っていく様子を日々の暮らしの中で実感しているのである。既に母親は、この期間で自分が母親だという自覚を持ち始めているのである。

 一方で、父親が何をしているかというと、妊娠前とあまり変わらず、仕事と趣味に没頭するという日々を送っているわけである。たまに嫁さんの大きく膨らんだお腹をさすって、「あ!動いた!」などと無邪気に呑気なことをほざくくらいである。

 このように、同じ子供の父親と母親であっても、親としての自覚が芽生えだす時期には大きな差があるのである。まあこれは飽くまで僕の個人的なエピソードなので、世の中の普通のお父さん達は、赤ちゃんが生まれた直後から立派に父親としての責務を果たしているのかもしれない。

 しかし、世の中には僕のように、子供が生まれているにもかかわらず、なお「俺って本当に父親なのだろうか?」みたいなことを思っているピーターパン達もいるのではないかと思う。

 この記事では、そんな駄目な新米パパたちのために、ノースキルでも対応可能であり、かつお母さんに喜ばれる子育てについて、自らの経験を織り交ぜながら伝授したいと思う。

スキルのいらない子育ての種目・・・それは寝かしつけのことである

 授乳、オムツ替え、入浴・・・などなど、子育てには様々な分野があるが、上述の通り、これらはある程度の予備知識とスキルを要するため、駄目な新米パパが従事するのはやや無理がある。ドラクエに例えるならば、レベル2とか3で「さまようよろい」とか「あばれザル」と戦うようなものである。このような強敵モンスターには、地道に経験値を稼いで、パパとしてのレベルアップをしてから挑むべきである。

 そんな中にあって、「子供の寝かしつけ」というのは、大した装備(事前準備)やレベル(スキル)も必要としないクエストなので、新米パパにもおすすめの仕事である。

 ただし、スキルは必要ないが、膨大な根気と忍耐力を要するため、それ相応の覚悟は必要である。それだけに寝かしつけをマスターすれば、ともに戦っている仲間であるママには大いに喜んでもらえ、信頼を勝ち取ることができるだろう。

なぜ子供の寝かしつけは根気と忍耐力を要するのか

 この記事を読んでいる新米パパの中には、なぜ寝かしつけに根気や忍耐力が必要なのか、いまいちピンときていない人もいるのではないだろうか。

 「子供なんてこっちが黙ってたって勝手に寝るもんだろ」とか「寝かしつけなんて隣で寝てるだけだから楽じゃん」などと思っているのならば、それは大きな間違いである。

 僕自身、子供を持って知ったことだが、眠りに落ちることを極端に恐れている。とにかく隙あらば寝たいと思っている僕には考えられないことである。

 これにはどういう背景があるのか、自分の子供を観察していると、ある仮説にたどり着いた。

 もしかすると、赤ん坊や幼児は時間の感覚が発達していないので、「一晩寝たら明日が来る」ということを信じていないのではないだろうか。彼らはただひたすら今を生きている。子供にとって寝るということは、今を終わらせてしまうことであり、それは彼らにとっては死ぬことと等しいのである。

 「寝たら死ぬ」と思っている子供をどう寝かしつけるか--

 これから我々ノースキルの新米パパが立ち向かうミッションは、かように困難なものなのである。

 しかし、子供がどう考えていようと、睡眠は小便や大便を垂れるのと同じように、人間の生理現象である。子供が寝るタイミングは必ず訪れるわけだが、それをいかにして早期に軟着陸させるかということが我々に与えられた任務なのである。

 

抱っこして適度な揺れを与える

 乳幼児を寝かしつけるためには、彼らを寝かせておいてはいけない。

 一見矛盾しているようだが、子供は大人と異なり、ただ寝転がせておけば、勝手に眠りに落ちるというものではないのである。

 「ゆりかご効果」というらしいが、乳幼児を寝かしつけるためには、しっかりと抱っこをして適度な揺れを与える必要があるようである。親が子供を抱いて家の中を歩き回るなどして、身体を静かに揺らしてあげることにより、子供は初めてリラックスして深い眠りに落ちることができるのである。

 ゆりかご効果というのであれば、ゆりかごにでも入れておけば良いじゃないかとも思うが、どうも乳幼児は人間の体温と質感も必要としているらしく、無機質なゆりかごに入れておくだけでは、乳幼児が必要としているものを満たすことはできないのではないだろうか。

 それにしても、どうして乳幼児というものは、これほどまでに面倒臭く、手がかかるように設計されているのだろうか。

 製造元に問い合わせて設計のやり直しを命じたいところだが、いざ「製造元ってどこよ?」と考えると、それは自分のような気もするし、あるいは「神様」という問い合わせ先もないようなところになってしまうので、どうしようもない。

心を穏やかに保つ

 これは乳幼児に限ったことではないが、人間が寝付くためには、心がある程度落ち着いていなければならない。隣の家で爆発音が聞こえたりなんかしたら、とても心安らかに眠ることなどできないだろう。

 とりわけ乳幼児は大人が思っているよりもずっと繊細かつ敏感な生き物である。大人が信じられないほど些細な現象でも敏感に察知し、はっと目を覚ましてしまうのである。

 仮にここまでこの記事を読んで、寝かしつけをする気になったお父さんが、子供を抱き、適度な揺れを与えて寝かしつけようとしても、5分や10分で任務が完了することなどまずない。子供抱いたままリビングを何十周もしたり、廊下を何十往復することもザラである。

 そんな時、「チッ早く寝ろよ」というような苛立ちや、「もう22時じゃないか、一体いつになったら寝るんだろう」という焦りを見せると、子供は誰よりも敏感な本能でこちらの苛立ちや焦りを肌で感じて泣き出してしまうのだ。

 子供を寝かしつける時、焦りや苛立ちは禁物であることを肝に銘じ、聖母マリアになったつもりで心穏やかにすることを忘れてはいけない。

 逆を言えば、子供の寝かしつけをマスターした時、あなたの精神状態は聖母マリアの域に達しているということになるのである。下手に出家して禅寺なんかで修行を積むよりも、俗世で己の子供の寝かしつけをする方が遥かに修行になるのである。

最後まで油断は禁物

 心を穏やかに保ちながら、子供を抱っこして歩き回ること数十分。ようやく子供がウトウトしはじめ、あともう少しで眠りそうだというステージに達しても安心してはいけない。子供を自分の腕から下ろし、睡眠状態を維持したまま布団に寝かせてはじめてミッションコンプリートである。

 素人パパにありがちなミスだが、まだ子供の眠りが浅い状態で布団に下ろしてしまい、子供に「あれ?ここお父さんの腕じゃないよね?」ということを気付かれてしまい、目を覚ましてしまうということがよく起きる。こうなると、ここまで積み上げてきた努力が台無しになり、最初からやり直しという事態に陥ってしまう。

 これまでの一時間近い取り組みを無駄にしないためにも、子供を布団に寝かせる際には余計な刺激を与えないよう、最後まで慎重に事を運ぶ必要がある。万一これに失敗すると、起きてしまった子供の機嫌はとんでもなく悪くなってしまうため、これを再び寝かしつけるためには、倍以上の労力を必要とする。

 俗に一旦落着している問題を再度蒸し返してしまうことを「寝た子を起こす」と表現することがあるが、これが非常に的を射た譬えであることを自らの体験をもって実感した次第である。

 以上、簡単ながら、新米パパが子供を寝かしつける際の心得をざっと列挙してみたが、なかなかの根気と労力を必要とするものであることがお分かりいただけただろうか。

 ここに書いたことは、飽くまで自分の子供の事例でしかないので、全てのケースに当てはまるものではないだろうが、一般的に、乳幼児期の子供を寝かしつけるのに悪戦苦闘を続けているお母さんは多いようである。そんな時に、お父さんが積極的に寝かしつけを買ってでれば、家庭内での株があがること間違いなしである。根気や忍耐力は必要だが、特別なスキルは必要としない素人パパでもできる仕事。それが寝かしつけなのである。この記事が、これから子供の寝かしつけというミッションに従事しようとするお父さんのお役に立てれば幸いである。

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