Withコロナの世界では、運動中にもマスクの着用が求められる。
僕が通っているスポーツジムでも、いつの間にか「ジムエリア内ではマスクを着用するように」というルールができていたし、学校の体育の授業中や部活の練習中にも生徒がマスクを着けている光景を見かける。
さすがに屋外ならマスクはいらねーんじゃないの?という気もしなくもないが、「運動中もマスクをすべし」という雰囲気はもうしばらく続きそうである。しかし、運動中に普段着用している不織布のマスクを着けることはオススメしない。
まずは自らの体験からその話をしようと思う。
不織布マスクでジョギングして死にそうになった
まだ新型コロナウイルスが流行り始めるずっと前、ほんの短い期間だが、皇居の周りをジョギングしていたことがあった。皇居の外周は5kmほどあり、この距離を30分程度かけて走るのがちょうどよい運動になっていた。
そのうちに、僕の大嫌いな花粉症の時期が訪れる。さすがにマスクを着けずに30分間走り続けると、走り終わった後に酷いクシャミや喉の痛みに悩まされることになった。今考えると、その時点で走るのをやめればよかったのだが、せっかく習慣化しかけている皇居ランを終わらせてしまうのももったいないので、マスクを着けて走ることを思いついた。
当然のことながら、当時はスポーツ用のマスクも一般化されておらず、走る時に着けるマスクも、普段使っている不織布マスクしか選択肢がない。
走り始めてからものの数分で、マスクの中は自分の吐息の蒸気や顔を流れる汗でぐしょぐしょになる。そうなるとマスクは顔にベッタリと貼り付き、普通に呼吸をすることすらままならなくなってしまう。そんな状況では、平常時よりも余計に酸素を必要とする有酸素運動を続けるのは到底無理である。
もしかすると、不織布のマスクを着けたままジョギングをして、息苦しさを感じながらもそのまま走り続けた結果、酸欠でお亡くなりになるというケースも1件くらいはあったのではないだろうか。
コロナ禍でZAMSTのスポーツマスクを買う
やはり運動中に着けるマスクには、汗や鼻水で濡れても呼吸しやすいような仕掛けが施されている必要がある。
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、スポーツ用のマスクが続々売り出されるようになった。冒頭に記載の通り、僕が通っているジムでもマスクの着用が求められるようになったので、ネットでスポーツ用のマスクを探してみると、ZAMSTがちょうどよい製品を出していた。
ZAMSTや膝や足首のサポーターなど、スポーツ用のグッズを色々と開発している日本企業である。僕も学生時代バスケットボールしていた時にZAMSTの製品にはお世話になったことがあるので、ご恩返しというほどでもないが購入することにした。
早速、ジムの中で着けてみると、すこぶる通気性が良く、汗や蒸気でマスクが湿っても、不織布マスクのように鼻や口にべったりと貼り付いてくることがないので、呼吸をするのも幾分楽である。公式サイトによれば、特殊な製法により、不織布マスクに比べて約10倍の呼吸のしやすさが実現されているということである。
また、丈夫な素材を使っているため、洗濯して何度でも使えるのも良いし、色が黒いのも精悍に見えてスポーツ時には適しているかもしれない。
飛沫はある程度抑えられる。でも花粉対策にはならない
一方で新型コロナウイルスの感染対策にはどのくらい効果があるのかは未知数である。鼻や口は布で覆われているので、咳やクシャミをした時に飛沫が飛び散るのはある程度抑えられるかもしれないが、不織布マスクに比べると効果は劣るのだろう。
また、先日ネットニュースを流し読みしていた際に、「花粉対策にもなる」という趣旨の広告がなされていた。
しかし、さすがにこれには疑問符を付けざるを得ない。「運動中でも呼吸がしやすい」ということは、マスクの中に空気が入ってきやすいということである。空気の中には当然ウイルスや花粉など色々なものが混ざっているので、そういったあらゆるものを吸い込みやすいということである。
運動時に呼吸をしやすくすることと、花粉やウイルスを防ぐことを両立させるのは至難の業なのだ。
公式サイトを見ても、「本製品は飛沫の拡散を簡易的にやわらげるものであり、ウイルス、花粉、粉塵(PM2.5他)などの侵入を防ぐものではありません。」ということが明記されている。それなのになぜ広告において「花粉対策」を謳ってしまったのか疑問が残る。
それでも、このマスクはまったく花粉対策の役に立たないわけではない。
まず不織布マスクをして、さらに不織布マスクにかぶせるようにスポーツをすると、不織布マスクが上から抑えられるので、不織布マスクが顔表面と密着しやすくなるのである。それによって、花粉の侵入を多少抑えられるという効果は期待できるのではないだろうか。
「運動中でもマスクを着けている」ということは、いかにも「感染対策を徹底しています」という視覚的な効果があって安心材料にはなるのかもしれないが、通気性の良いスポーツマスクというのが本当の意味で感染対策になっているかということには未知数な部分がある。
どんなに通気性のよいマスクが開発されたところで、何も着けないことに勝る通気性や熱中症対策はないわけなので、本当に感染対策になるのかということをしっかりと検証したうえで、大した効果もないということであれば、潔く歴史的遺物として世の中から葬り去るという判断も必要になるだろう。