レイカーズのHCに就任したダービン・ハム
レブロン・ジェームズやラッセル・ウェストブルックなどといったスーパースターを擁し、優勝候補の一角と目されながらまさかの低迷に終わってしまった2021-22シーズンのロサンゼルス・レイカーズ。そんなレイカーズが、新たなヘッドコーチとしてダービン・ハムを迎え入れたという。
ダービン・ハムは1990年代後半から2000年代前半にかけて複数のチームに在籍したNBA選手であった。しかし、選手としては特に目立った実績があるわけではない。
個人的に1990年代後半から2000年代前半というのは、僕の人生で最も熱心にNBAを見ていた時期である。そんな僕でも、ダービン・ハムという選手名については、「いつかのダンクコンテストに出ていたな」(正確には1997年だそうだ)とか「デトロイト・ピストンズが優勝した時のベンチメンバーだったな」くらいの薄い印象しかない。(2003-2004シーズンに優勝したデトロイト・ピストンズには個人的に思い入れがあるのでいつか記事にしてみたい。)
名選手でなければ監督として大成できないというわけでは決してないが、選手としてあまりパッとしなかったダービン・ハムに優勝の期待がかかるレイカーズのHCが務まるのだろうか?という不安が生じてしまう。ましてハムには過去にアシスタント・コーチしての経験はあるが、HC職は未経験である。
HCにうるさいレブロン・ジェームズも歓迎
ところが、意外?にもレイカーズの大黒柱であるレブロン・ジェームズが、ハムのHC就任を大歓迎するツイートを発したのである。
レブロン・ジェームズは現役選手でありながら、HCの人事にまで介入できるほど絶大な権力を持っているとされている。クリーブランド・キャバリアーズ時代にも、彼の一存で首が飛んだHCが何人かいるとも噂され、「コーチ・キラー」という異名さえ与えられている。
それだけHCに厳しいイメージのあるレブロン・ジェームズが諸手を挙げて歓迎しているということは、彼がハムのコーチとしての手腕を高く評価していることを表している。
まだHCとして何の実績がないハムがここまで評価される理由はなんなのか気になるところである。
元チームメイト達のダービン・ハム評
ダービン・ハムのレイカーズHC就任を受け、彼の元チームメイトなど、共に戦った仲間達が様々な反応を寄せている。それらを見てみると、どうやら彼は非常に優れた人格の持ち主であるようだ。
彼が優勝メンバーの一員として名を連ねていた2003-04シーズンのデトロイト・ピストンズにおいて、中心選手だったチャンシー・ビラップスは、ハムのことをこう評している。
「努力家で競争心が高い選手だった。チームに熱さをもたらしてくれる奴で、チームメイトに欲しいタイプの選手だった。誰に聞いても彼のことを悪く言う奴はいないだろう。」
また、かつてロサンゼルス・レイカーズでコービー・ブライアントとともにレイカーズを優勝に導いたメッタ・ワールドピースことロン・アーテストは、ハムがレイカーズで初めてアシスタント・コーチを務めていた時から、ハムのことをいずれはHCになる男だと目をつけていたそうだ。
「ダービン・ハムは現代バスケの優れた理解者であり、コミュニケーションの取り方も直接的で伝わりやすいから好きなコーチだった。」というようなことを言っている。
アル・ホーフォードやヤニス・アンテトクンポを育てた名コーチ?
また、ESPNで「Jalen and Jacoby」というポッドキャスト番組を持っている元NBA選手のジェイレン・ローズが、ポッドキャストでこんなことを言っていた。
ダービン・ハムは60勝した時のアトランタ・ホークスでアシスタント・コーチを務めていたが、ホークスのセンターであるアル・ホーフォードに3PTを打つように指導したのはダービン・ハムだった。
また、ハムはミルウォーキー・バックスでもアシスタント・コーチを務めていたが、ヤニス・アンテトクンポがバックスへの残留を決めたのは、ダービン・ハムがいたからだと言われている。
アンテトクンポやブルック・ロペス、ボビー・ポーティスなどの選手を優れたディフェンダーとして育てあげ、バックスに2020−21シーズンのチャンピオンにのし上げたのはダービン・ハムの手腕によるところが大きい。
こうしたダービン・ハムの人物評を見ると、優れた人間性に加えて、指導者としての適性も兼ね備えた男であることが分かる。
しかし、今のロサンゼルス・レイカーズが必要としているのは、選手の育成よりも、既にキャリアのピークを超えたスター選手達の手綱をさばく手腕である。
経験豊富なHCでも相当難しい仕事であるように思うが、果たして新米ヘッドコーチのダービン・ハムがどのようにしてレイカーズの指揮を執るのか注目していきたい。