2023年の夏に開催される予定のバスケットボールのワールドカップの予選が行われている。
今度のワールドカップは、バスケットボールでは初となるフィリピン・インドネシア・日本の3カ国共催となるため、日本は予選の結果に関わらず開催国枠で出場することが決定しているが、2022年9月現在で日本代表の戦績は3勝5敗と負け越しており、あまり振るわない。
NBA選手がいない日本代表
その最大の要因として、やはり現役NBA選手の八村塁と渡邊雄太が出場していないことが挙げられるのではないだろうか。
アジア予選で上位に入っているオーストラリア、ニュージーランド、中国に比べると、国内リーグのレベルがやや劣る日本においては、結局のところ、ロスターの中に海外の強豪リーグで活躍している選手が何人いるかということが強さの指標となる。
今回のワールドカップ予選では、海外リーグに在籍している選手は、最近までオーストラリアのメルボルン・ユナイテッドでプレーし、現在はNBAに挑戦中の馬場雄大ひとりだけである。
東京五輪より強いバスケットボール日本代表はもう見られないかもしれない
それを考えると、東京オリンピックの日本代表のメンバーは豪華だった。馬場雄大に加えて、八村塁・渡邊雄太というNBA選手が2人もいたのだから。
個人的には、NBA選手が2人も在籍する日本代表はこれから長い間見られないのではないかという気がしている。
八村塁と渡邊雄太がNBA選手として活躍できる時間はそれほど長くないだろう。八村塁はともかく、渡邊雄太は常にNBAと下部リーグとの瀬戸際に立たされているうえ、これからは年齢的にも身体能力が下降する時期に入るからだ。
渡邊雄太・八村塁に続くNBA選手は現れるのか?
渡邊雄太や八村塁がNBAを抜けたとしても、その後に続く選手が出てくれば良いのだ。現に、将来のNBA候補生として数名の日本人選手がリストアップされている。
NBA選手になるためには、先達の渡邊雄太や八村塁と同じように、アメリカのNCAAのディビジョン1に所属する大学に入学するのが最短ルートと言えるだろう。
そうなると、最近NCAAディビジョン1のラドフォード大学への入学を決めた山﨑一渉が最有力候補となる。しかし、山﨑一渉の身長は2mにやや及ばず、同じフォワードのポジションである渡邊雄太や八村塁に比べて上背が低いという懸念がある。
最近はスピードや技術が重視されるようになってきてはいるが、最後の最後で物を言うのはやはり身長の高さである。山﨑がフォワードとしてプレーしているいくためには、背の低さをどのように補うかが課題となるだろう。
また、NCAAのディビジョン1に在籍している日本人選手には、昨年ネブラスカ大学に編入した富永啓生がいる。ステフィン・カリーを彷彿とさせるような広いシュートレンジによる高い得点能力を売りにしているが、富永も身長が190cmに満たないため、NBAでポジションを勝ち取るためには相当厳しい戦いを強いられそうである。
以上のことから、少なくとも向こう3~4年間、日本が渡邉・八村に続くNBA選手を輩出するのは難しいというのが個人的な見立てである。
トム・ホーバスは新たな価値観を創造してくれるか
幾分望みは薄くなるが、いっそのことNBA選手に頼らずに日本代表チームを強くするという考え方もある。
日本人選手の特性を活かし、国際的な潮流や既成概念にとらわれずに独自のスタイルを確立するというやり方である。それはまさに日本代表のHCに就任したトム・ホーバスが、東京オリンピックの女子代表チームで実現したことだ。
ホーバスHCはアジアカップやワールドカップ予選を通じて、男子の日本代表チームのあるべき姿を模索している最中ではあるが、着任早々、基本的な戦い方は女子チームと同じであるという内容の発言をしている。すなわち、スピードを活かして速い展開に持ち込み、ガードの選手がドライブで相手ディフェンスを撹乱し、スペースの空いたスリーポイントやゴール下から得点を重ねるというスタイルである。
ホーバスHCは、身長は170cm程度だが、類まれなスピードとタフなディフェンス、そして高いパスセンスを持つ河村勇輝に東京オリンピックの女子チームの銀メダルの立役者となった町田瑠唯の影を重ねているようなフシも見られる。
バスケットボール選手としては身長が低すぎる河村がNBAに入れるチャンスは0に等しいと言ってよいだろう。しかし、河村の持つスピードや身体能力を活かすことにより、日本のバスケットボールを他では見られない個性的なものに進化させ、新たなスタイルを創造するという可能性に賭けるというやり方もあるのではないか。
勝算は低いかもしれないが、今後出てくるかわからない日本人NBA選手の出現をただ待っているよりかは生産的であると思われる。