NBAの2022-23シーズンが開幕して2ヶ月ほど経過したが、新人王に輝くのは今後大きな怪我でもしない限りはオーランド・マジックが1位で指名したパオロ・バンケロになる見込みが高そうだ。
2022年6月のドラフト時を思い起こすと、1位指名権を持つオーランド・マジックは、ジャバリ・スミスJr.かチェット・ホルムグレンの2人のフォワードのうちいずれかを指名であろうと目されていた。ところが蓋を開けてみると、マジックが指名したのはジャバリでもホルムグレンでもない第3のフォワード、バンケロであったことは多少の驚きをもって伝えられた。
バンケロの指名には謎も残るが・・・
NBAでは各チームがドラフト前に指名を考えている選手を複数名ワークアウトに招聘し、実際のプレイやインタビューなどを経て、その選手がチームのスタイルに馴染むことができるか確認したうえで指名を決めるというプロセスを経るのが一般的である。ところが、マジックはバンケロをワークアウトに招聘せず、Zoomでインタビューを行ったのみということだったため、マジックはバンケロを指名候補から外しているというのが専らのウワサであったからである。
マジックがワークアウトにも呼んでいないバンケロをなぜ指名したのか、そこにはどのような意思決定のプロセスがあったのかは分からないが、結果としてバンケロを指名したことは成功だったと言えるだろう。
パオロ・バンケロの魅力
バンケロを見てまず驚くのは、その体格の良さである。身長は208cmと言われる高さに加えて横の幅も20歳とは思えないほどがっしりとしている。NBAのルーキーは他の選手に比べて線が細く華奢に見えることが多いが、バンケロの体格はベテランの選手にも全く引けを取らない。バンケロと同じオーランド・マジックが2004年にドラフト1位で指名したドワイト・ハワードも高校を卒業したばかりとは思えないほどの肩幅をしていたものだが、ルーキーの体格に驚かされるのはそれ以来のことかもしれない。
そのうえ、バンケロはとてもよく走り、フットワークも軽い。ポジション柄ゴール付近でプレイすることが多いわりに、オフェンスに転ずるやいなや速攻の前線を走っていることがある。ボールをもらうと体格に似つかわしくないユーロステップからレイアップを決めたりするので驚かされる。周りの選手の動きもよく見ていて、味方選手に堅実なアシストを供給することもでき、既にオールラウンダーとして成熟しているような印象である。
重戦車のような体格とそれに似つかわしくない走力、さらに巧みなボールハンドリングやパスを見ていると、もしかするとこいつはレブロン・ジェームズの後継者になれる選手ではないかとさえ思えてくるほどである。
オーランド・マジックが1位指名した選手は超大物になるというジンクス
バンケロをNBA選手として評価するのはまだ早計であるが、オーランド・マジックがドラフト1位で指名した選手は大物になるというジンクスは存在する。
1992年に1位指名したシャキール・オニール、2004年に1位指名したドワイト・ハワードはいずれもオールスターに選出され、マジックをチャンピオンの座にのし上げることはなかったが、それぞれ一度は中心選手としてファイナルにまで進出させている。そして、いずれも選手として脂が乗ってきた頃にロサンゼルス・レイカーズに移籍してしまうというオチまで共通しているのだ。
果たしてバンケロはマジックにドラフト1位で指名された2人の先輩であるオニールやハワードと同じ道を辿っていくのか、今後のバンケロの行く末を見守っていきたい。
バンケロの体質を巡る噂
バンケロについてはひとつ気になることもある。
曰く、バンケロは極度の汗かきで、1試合こなすごとに7ポンド（約3kg）体重が減っているということである。これにより脱水症状を起こして脚が攣りやすいのだという話が、ベンチに下がって痛そうに顔を顰めている大学時代の彼の動画とともに取り沙汰されていた。
NBAは1シーズン82試合と、大学に比べて試合数が格段に増えるため、果たしてNBAの環境に適応できるのか疑問を投げかける声もあったが、今のところバンケロが極端に体重を落としているようにも見えないし、それどころかそこまで大量の汗をかいているようにも見えない。
1990年代にゴール下で強烈なバトルを繰り広げていたニューヨーク・ニックスのパトリック・ユーイングや、前述したシャキール・オニールの方が汗っかきであったように記憶している。フリースローなどで試合が止まる度に、彼らが立っていた場所には水たまりができ、コートサイドで待機しているアルバイトの子供がモップがけをしていた光景が懐かしく思い出される。