【祝優勝】ニコラ・ヨキッチからにじみ出る父性のようなもの

 デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチが出場しているゲームを観ていると、NBAの試合でありながら、ミニバスのメンバーが足りないので、バスケ経験者のお父さんが仕方なく混じっているのを観ているような気分にさせられる。

 この記事では、ニコラ・ヨキッチのお父さんっぽさがどこから来るのか極めて主観的に分析していきたいと思う。

体型がお父さんっぽい

 公式では211cmとされているがおそらくはもう少し高いであろう身長と体重130kgというずんぐりした体格はまるでメタボに悩んでいるお父さんそのままである。筋骨隆々で引き締まった体型の選手ばかりが揃っているNBAにおいては、ヨキッチの熊のような体型が一層際立つ。

 ヨキッチの心の中を推し量ることはできないけれども、熊のような体型で動作もゆっくりしているので、少なくとも外からはあまり闘争心をあらわにせず、勝敗にもこだわっていないようにも見える。試合が進み、運動量が増えてくると、白い顔が紅潮して鼻血を出しているような感じになるのも、滑稽さに拍車をかけている。

精神的にもお父さんっぽい

 身体的な特徴もさることながら、バスケットボールという競技に臨む姿勢からも、ヨキッチのお父さんっぽさを垣間見ることができる。

 NBAの選手はどうしても得点を取ることを優先しがちであるが、ヨキッチは空いている選手にパスを供給することを優先的に考えているように見える。まるで、あの子はこの試合でまだ点を取っていないからとか、あの子は良い場所にポジションを取っているからパスを出してあげようとか、他の選手よりも試合を一段高いところで俯瞰しているような精神的余裕を感じさせる。そのことはヨキッチ本人の「得点は1人の選手しか幸せにしないが、パスは2人の人間を幸せにする」という発言からも見て取ることができる。

 従来、バスケットボールという競技において、パスを出すのは身長が低くてすばしっこいポイントガードの役割とされていた。しかし、ヨキッチのポジションは大柄な選手が務めるセンターで、「身長が低くてすばしっこい」とは対極にいる。

 身長の高いセンターはオフェンスの際、ゴール下に陣取るのが定石とされていたが、ヨキッチの定位置はゴールに正対したハイポストから3ポイントラインの外側と相当ゴールから離れたところでコート全体を広く見回し、パスの機会を窺っている。

 ヨキッチ自身、非常に柔らかいシュートタッチを持っており、その気になればそれこそ3ポイントラインの遥か後方からシュートを沈めることもできるが、ヨキッチにとって、それは飽くまでシュートを警戒させてパスを出しやすくするための手段に過ぎないように見える。

 また、2023年時点で28歳という年齢にも関わらず、SNSをやっていないというのもお父さんっぽくて良い。SNSを駆使して自分の商品価値を高めるために躍起になっている選手が多いなか、ヨキッチは「時間の無駄だ」としてSNSのアカウントを全て削除したと伝えられている。承認欲求の呪縛から逃れられない若者が絶えないなか、ヨキッチは精神的に成熟しているというどころか、既に老境に至っているような感じである。

【2023年6月加筆】実際にお父さんだった

 この度、ニコラ・ヨキッチ率いるデンバー・ナゲッツは圧倒的な強さで2022-23シーズンのチャンピオンに輝いた。ヨキッチ自身は3シーズン連続のシーズンMVPは逃したものの、初めてチャンピオンの栄冠に輝き、ファイナルではMVPを受賞することとなった。

 ナゲッツがチャンピオンに輝いたその日、ヨキッチはセレモニーに小さな娘を連れてきていた。どうやら僕が知らないうちにヨキッチは本当のおやじさんになっていたようだった。

 優勝後の記者会見の場において、ヨキッチは「(数日後に控えている)優勝パレードは楽しみか?」と尋ねられると顔を覆って「家に帰らなきゃならないんだけど」と答えていたのが印象的であった。

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